院長先生のインフォームド・コンセント
院長先生は、部屋を暗くしてネコさんの目を診察しています。
「(そういえば、女の先生はこういう診断はけっしてしなかったなあ。)」
「うーん、これはだいぶ悪化しちゃっているしゃないかっ。
雑菌が入るとまずいのでそのお薬も出しましょう。」
威勢のいい甲高い声で言いました。
すこしイライラしているのか院長先生はいつもより早口でした。
先生は診察室の棚にあった分厚い本を取り出し、パラパラとめくってニンゲンの目の前に開いてみせました。
それは、猫の病気や体の仕組みなどを説明するために絵や写真をいっぱい掲載したフルカラーの図鑑のような分厚い本でした。
開いたページには、猫の目の断面図が描かれていました。
院長先生は、その絵を指さしながら
「ここが、角膜、虹彩、水晶体、デスメ膜で・・・・・ネコさんは、一番表面の角膜部分に傷が入っていてそれが炎症を起こしているんです。」
と説明をしてくれました。
頭では、なんとなくわかっていたネコさんのケガの状態ですが、こうやって絵を見ながらだとずいぶんわかりやすいな、と思ったニンゲンです。
昭和の香り漂う前の病院では、なかった説明の方法でした。
初めて図鑑を目の前に広げて説明を受けたニンゲンは、そのわかりやすさにちょっと感動し、大きな声を院長先生の経験と自信のあらわれだとすっかり信頼していたのでした。
そして、院長先生の説明の中にこの先もし悪化したらどうなるかや具体的な治療のお話がまるでなかったことになどまったく気づいていなかったのでした。

「(そういえば、女の先生はこういう診断はけっしてしなかったなあ。)」
「うーん、これはだいぶ悪化しちゃっているしゃないかっ。
雑菌が入るとまずいのでそのお薬も出しましょう。」
威勢のいい甲高い声で言いました。
すこしイライラしているのか院長先生はいつもより早口でした。
先生は診察室の棚にあった分厚い本を取り出し、パラパラとめくってニンゲンの目の前に開いてみせました。
それは、猫の病気や体の仕組みなどを説明するために絵や写真をいっぱい掲載したフルカラーの図鑑のような分厚い本でした。
開いたページには、猫の目の断面図が描かれていました。
院長先生は、その絵を指さしながら
「ここが、角膜、虹彩、水晶体、デスメ膜で・・・・・ネコさんは、一番表面の角膜部分に傷が入っていてそれが炎症を起こしているんです。」
と説明をしてくれました。
頭では、なんとなくわかっていたネコさんのケガの状態ですが、こうやって絵を見ながらだとずいぶんわかりやすいな、と思ったニンゲンです。
昭和の香り漂う前の病院では、なかった説明の方法でした。
初めて図鑑を目の前に広げて説明を受けたニンゲンは、そのわかりやすさにちょっと感動し、大きな声を院長先生の経験と自信のあらわれだとすっかり信頼していたのでした。
そして、院長先生の説明の中にこの先もし悪化したらどうなるかや具体的な治療のお話がまるでなかったことになどまったく気づいていなかったのでした。
